日本財団 図書館


 

である。qrはモード解析によって得られるr次モードの基準座標であり、Hdは入射波と散乱波によるコチン関数である。(10)式右辺第2項を考慮することよって、弾性変形を考慮した状態で定常波漂流力を求めることができる。
本論では、Haskind−Newmanの関係を用いて計算精度の検討を行った。これは、無限水深と有限水深の場合とで以下のように示される。

465-1.gif

ここで、Njjはjモードの運動によるjモードに対する造波減衰係数であり、弾性運動を論じる場合もこのまま適応可能である。(11)、(12)によって得られた係数と発散波の圧力から直接求められる造波減衰係数を比較することによって計算精度の確認が可能となる。その際、弾性モードも剛体モードと同様に計算することができる。

465-2.gif

Fig.2 Set up system of the experiment

3. 水槽実験
発泡ウレタン製の一体型弾性浮体模型による弾性応答及び定常波漂流力の実験を、東京大学生産技術研究所千葉実験所内の船舶航海試験水槽にて行った。浮体模型は長さ3.0m、幅1.75m、高さ0.04m、吃水4.4mmである。浮体の曲げ剛性は単位幅当たり80kgf?/mであった。波浪条件は縦波中及び縦波と横波の直交2方向波中でそれぞれLλ:0.5からL/λ=7.0の範囲で入射波波高は2.0cmで計測を行った。ここで、Lは浮体長さ、λは入射波の波長である。また、水深は2.3mであった。
鉛直変位の計測には2次元画像処理システム5)を用いた。また、波漂流力の計測は係留バネの伸びから計算する方法をとった。
4. 結果及び考察
水深が十分に深い場合での一体型模型を用いた波浪中弾性応答実験の結果と理論計算結果の比較を示す。まず、縦波中での浮体長手方向の各点のにおける鉛直変位の絶対値を比較する。Fig.3〜Fig.5に規則波中での浮体長手方向の各点における鉛直変位の絶対値を示す。それぞれはL/λ = 0.5,2.0,2.5に対応する。さらに高周波数側までの実験を行ったが、データのノイズがひどかったためここまでの結果とした。どの図においても全体的に理論値は実験値と比較的よく一致している。しかし、浮体中央部で実験値が大きくなる傾向を理論値はうまく予測できていないという傾向がある。このことは著者らの経験上、弾性応答実験において常に現れる現象であり、その原因については検討の余地が残る。
次に、比較的実験データが高周波数側まできれいに計測できた。端部での鉛直変位の入射波波長による変化を示す。Fig.6には縦波中での結果を、Fig.7には縦波と横波の二方向波中での実験結果を理論値と比較した。ただし、計測点はFig.2中のP点である。どちらの結果も理論値は精度よく実験値を推定しているといえる。
以上の結果より、一体型の弾性浮体に対しても本計算手法で十分な弾性応答推定が可能であることいえる。さらに高周波数側までの実験計測が必要であるが、これについては、特に3次元的な水槽実験における実験計測技術の検討が必要であると思われる。
規則波中の定常波漂流力について考察する。まず、Fig.8に実験値と理論値の比較を示す。ただし、Bは浮体

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION